乾癬とは

乾癬(かんせん)とは一体どんな病気だと思いますか?
当院のホームページをお知りになった方で、乾癬で検索しなかった方にはさっぱり分からないかも知れませんね。
また今現在、乾癬でお困りの方もひょっとしたら、詳しくはご存知ないかも知れません。 端的に言えば、乾癬は『皮膚の角質が角化したもの』です。 角質とは表皮の一番外側の層で、そこが硬くなる事を「角化」と言います。 角化が進んで厚くなると、乾燥して鱗屑(りんせつ:銀白色の鱗のようなカサカサ)が付き、それが落屑する事があります。
これら皮膚が角化する症状(角化症)は、『遺伝性角化症』と『後天性角化症』に大別できます。
そして後天性角化症は、炎症を主体とし瘙痒などを伴う『炎症性角化症』(乾癬、扁平苔癬など)と、炎症を伴わない『非炎症性角化症』(鶏眼※1や胼胝※2など)に分類する事が出来ます。
つまり乾癬とは、炎症による紅い斑や痒みを伴う皮膚が硬くなる病気で、場合によっては鱗屑を伴うものを言います。
疫学的な日本人の発症率は0.1~0.3%であり、男女比は2:1で男性に多いと言われています。 青年から中年期の発症が多く、慢性に寛解と増悪を繰り返すと言われています。
根本的な原因は未だに不明です。
表皮のターンオーバー時間※3が4~7日と著しく短縮している事や、家族内発症率の高さから多因子遺伝の関与の可能性やHLA-Cw6※4などとの相関、最近ではT細胞の機能異常による発症である証拠が集まっているとの報告もあります。

※1:けいがん。いわゆる“うおのめ”
※2:べんち。俗に言う“たこ”
※3:基底細胞が角化により角質細胞として脱落するまでの時間。通常は28日。
※4:HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は1954年に発見された白血球の血液型。 組織適合性抗原(ヒトの免疫に関わる重要な分子)として働いている。移植時の適合など。

乾癬の分類

病態により5つに分類されます。 [あたらしい皮膚科学より抜粋]

1)尋常性乾癬 psoriasis vulgaris

紅色丘疹から始まり、次第に拡大融合して、境界明瞭で銀白色の厚い鱗屑を付着した紅斑局面を形成するようになる。
皮疹の自覚症状は通常無いが、瘙痒を伴う場合もある。
肘頭や膝蓋、被髮頭部、臀部などの刺激を受け易い部位に好発する。 肥満者では間擦部にも認められ易い。

2) 滴状乾癬 guttate psoriasis

 体幹や四肢近位側に、比較的急性の経過で1㎝大までの小さな角化性紅斑が多発、散布する。  個々の皮疹は尋常性乾癬と同様である。  小児に多く、上気道のレンサ球菌感染後の発症や薬剤誘発性も存在する。

3) 膿疱性乾癬 pustular psoriasis

膿疱を主体とする。汎発型や限局型などの病型がある。 汎発型では発熱や全身倦怠感、戦慄と共に全身に紅斑を生じ、その上に無菌性膿疱が多発し、更に融合する。 膿疱は容易に破れてびらんを形成する。そして滲出液の漏出により低蛋白血症を来たし、著しく全身状態が悪化する場合も少なくない。 尋常性乾癬の経過中に生じる事もあるが、乾癬の既往が無く突然発症する場合もある。

4) 乾癬性紅皮症 erythrodermic psoriasis  

乾癬の皮疹が全身に隈なく現れるようになり、紅皮症化したものを言う。  病巣部では表皮形成の為、大量の蛋白質が消費され、また、形成された角層も不完全な為、低蛋白血症や脱水、電解質異常などを来たし易い。

5) 乾癬性関節炎 psoriatic arthritis

乾癬に伴って関節炎症状を来たしたものを言う。 大部分はDIP(distal interphalangeal :遠位指趾間)関節を侵す末梢型であるが、脊椎や仙腸骨を侵す中枢型も存在する。 関節炎が先行し、皮疹が認められない場合も少なくない。

一般的な治療方法

治療法は大きく分けると『外用療法』『光線療法』『内服療法』『生物学的製剤』があり、これらを単独、または組合わせるケースが多いと思います。

  • 外用療法 :ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬など
    【ステロイド】デルモベート、アンテベート、トプシム、マイザー、フルメタ、リンデロン、ロコイド、キンダベートなど
    【活性型D3製剤】ボンアルファ、ドボネックス、オキサロールなど
  • 光線療法 :PUVA療法(紫外線照射とソラレンと言う薬の組み合わせ)、ナローバンドUVB
  • 内服療法 :シクロスポリン(移植後の免疫抑制剤)、レチノイド(ビタミンA誘導体)、ステロイド
    【シクロスポリン】サンデュミン、ネオーラル
    【レチノイド】 チガソン
    【ステロイド】 プレドニン、メドロール、デカドロン、リンデロンなど
  • 生物学的製剤:インフリキシマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブ
    【インフリキシマブ】キメラ抗体製剤:レミケード
    【アダリムマブ】ヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体製剤(遺伝子組換え):ヒュミラ
    【ウステキヌマブ】ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤(遺伝子組換え):ステラーラ

発症機序の仮説

乾癬に関しては、未だに発症原因は不明です。
その為、あらゆる治療方法はある種の“仮説”であると考えられます。
『乾癬とは』にも少し書きましたが、西洋医学が注目をしているポイントは
① 遺伝的要因
② 免疫学的要因
③ その他の環境因子

の3つに絞れると思います。 上記のような治療薬が開発されて来た経緯も、発症している症状に注目し、そこで起きているであろう現象を細かく診て行った事で、各々の症状を如何に押さえるか?と言う事への回答だと思います。
西洋医学の良いところは、原因と思われる物質の過剰や不足を見つけ、それを退治したり追加したりする事で人類に大きく貢献して来ました。 しかし有効な原因を発見出来ない時、西洋医学はなかなか適切な回答をする事が難しい事もあるようです。

当院での治療

当院での乾癬の治療については、現在はテアテマンドールと言う手技をメインで使っております。 テアテマンドールが考える乾癬の発症原因は「脾臓の機能低下」であり、それを誘発する肝臓の腫れや膵臓の腫れ(ここで腫れとは過剰な働きを言います)に注目しております。 脾臓の機能を賦活させる為に、“テアテマンドール”と言う手技を用いて改善を試みております。
治療成績ですが、当院に限って言えば『治る人はどんどん勝手に治るし、治らない人は全く治らない』と言えます。
私自身はこの乾癬と言う病は、『単一原因ではない』と思っています。 西洋医学が注目する3つのポイント同様に、
① 遺伝的要因  ⇒ 遺伝子ではなく、『気質』や『体質』と捉えています。
② 免疫学的要因 ⇒ 副腎皮質ホルモン(コルチゾールとかステロイド)の抗炎症作用と抗ストレス作用
③ その他の環境要因 ⇒ 生活習慣、食事、仕事、家庭、人間関係など  
と大別して、患者さんにはご説明しております(詳細は来院された時にお時間を取ってお話します)。
特に、副腎皮質ホルモンの炎症を抑える作用とストレスを抑える作用のバランスが大きく欠けた時に、乾癬は発症しているように思います。
その時、交感神経・副交感神経の自律神経も大きく関わって来ます。
そう云う点では乾癬に限らず、アレルギー疾患全般も同じような発症機序ではないかと推測しております。アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、喘息、掌蹠膿胞症なども、違いは“その方の弱い所”に症状が出ていると言うだけではないかと考えております。
ただし、何でもかんでも“テアテマンドール”と言うのではなく、西洋医学的・東洋医学的・テアテマンドール的のあらゆる観点から鑑別して、お手伝い出来るかどのかの判断は必ず必要になります。
私はこれらの事を初診の時にゆっくり説明させて戴いてから施術に入ります。
治療としては、テアテマンドールによって内臓機能の回復(副腎や脾臓、膵臓など)をお手伝いします。 それと同時に、患者さんには上記の要因について一緒に考えて戴き、改善できるものはして戴き、そうでないものは“認知”して戴く事でストレスとなるものを少しでも軽くして貰っています。 私が治せる、または治すのではなく、患者さんと一緒に歩む事で、結果として改善しているのではないかと思っております。

患者さんが出来る改善ポイント(過去の症例より実績のあるもの)

私は患者さんに必ずお話しする事があります。それは『あなたの治るスイッチを押して下さい』です。
乾癬治療に限らず、臨床を長く続けていると必ずその方の治るスイッチ(≒ポイント)があるように思います。
人によっては原因を納得する事であったり、または理解される事であったり、場合によっては泣く事で大きく改善する事もあります。 そのような事を多く経験して来た中で、乾癬の患者さんが行った改善ポイントが『スイッチ』になっていた事があります。
改善に寄与したであろう行為は、その方に許可を戴いて他の患者さんにも伝えさせて戴いております。 ここでもそれらをお伝えしていきたいと思いますので、参考までに読んでみて下さい。
詳しい解説は、治療の際にお話し出来ればと思います。
その行為に至るまで、どの患者さんにもストーリーがあり、文章にするにはあまりにも長くなり過ぎてしまいますので…。
① 毎日ビールを飲む方が、ノンアルコールビールに替えた。(糖質はビールより高いのですが…)
② ビールを炭酸水に替えた。(アルコールが良くなかったのでは)
③ 大福餅を毎日5つ食べていた方が、一日1個にした。(糖質の摂り過ぎだったと思われます)
④ お酒を止めた。(アルコールが悪化原因のようでした)
⑤ 自分が発症したメカニズムを理解した。(心理的ストレスの関与を理解できたそうです)
⑥ 過剰な夫婦生活その他を止めた。(射精は副腎委縮につながる為)
⑦ 過剰な筋肉トレーニングを止めた。(アドレナリンの過剰分泌を促してしまっていたと思われます)
⑧ お菓子(間食)を止めた。(糖質、脂質の過剰摂取)
⑨ 10杯のコーヒーを飲むのを少なくした。(カフェインによる交感神経への作用と思われます)
⑩ チョコレートを食べないようにした。(糖質・カフェインの摂り過ぎ)
⑪ 野菜中心の食事に替えた。(ビタミンや食物繊維の不足)
⑫ 12時前に寝るようにした。(睡眠不足による日内リズムの乱れ)
⑬ 運動をするようにした。(副交感神経過剰の改善)
⑭ 少しだけ日光浴(日焼けによる活性型ビタミンD3の作用と思われるが、焼き過ぎは却ってダメ)

これらがどの方にも合うとは限りません。
しかし今までの生活などを見直す事は、乾癬を治して行く上では大切な事なのではないかと思います。
それは魔法のような治療を期待するのではなく、ご本人がこの病とシッカリ向き合いながら、地道に取り組めば、必ず改善に向かうと私自身が信じているからです。 治るには治るなりの理由がありますし、治らないのもそれなりの理由があるはずです。
治る理由、治らない理由を一緒に考えて、乾癬の改善に取り組んでみませんか?