前回の続きをお話ししますね。
②の『視床下部-下垂体-副腎系がどのくらい疲憊(ひへき)しているのか?』ですが、これがなかなか判断が難しいところなのです。
大きな病院などで検査をすれば、ひょっとしたら分かるかも知れませんが、皮膚疾患においてこのルートを検査すると言うことは、まず聞いたことがありません。
皮膚科は基本的に【体中の肉眼で見える部位すべてが診察範囲】となります。
つまり、『見えている所』を対象に診察をしてくれます。
見えている所の症状から原因を推察して、投薬や手術などをしてくれます。
ばい菌が入って化膿していると思えば、抗生物質を投与してくれます。
何らかの物質によるアレルギーなら、抗アレルギー薬を投与してくれますし、帯状疱疹のような診断が付けば、原因がヘルペスウイすると特定できているので、抗ヘルペスウイルス薬を投与してくれます。
もちろん、症状によっては血液検査をしたり、患部から採取したものを培養して原因特定の手掛かりにすることもあります。
しかしほとんどが『そこに何があるのか?』と言うことを調べることになると思います。
見つかったものが、菌やウイルスであれば、その対抗手段を講じますが、生体が産生した物質の場合は、その物質が出来ないようにすることをします。
ちょっとズレるかも知れませんが、ヒスタミンと言う物質で起こる反応・・・例えば痒みが出る場合は、ヒスタミンが受容される前に、別のものを受容させてヒスタミンによる反応を起さないようにする。
このような仕組みで、患部に在る物質が働かないようにする、または産生されないようにする薬が研究されていると思います。
つまりある物質が産生される生理学的仕組みを解明し、それをどこかでブロックすると言うことが、投薬治療の基本となると考えられます。
あくまでも悪さをする物質を作らせないようにする、抑えると言うことだと思います。
ですから、『全体として正しい仕組みへ回帰するための方策』は、あまり行われていないかも知れませんね。
なぜなら、仕組みを調えると言うことは、それをまず説明しなければなりませんし、それを回復させるために、患者さん自らに行動をお願いすることが多いはずです。
多くの皮膚科では、忙しいのが現実です。
その為、投薬や塗り薬を塗って様子を見ると言うスタイルが多いので、細かい説明や仕組みの解説、ライフスタイルの改善へのアドバイスは少ないかも知れませんね。
また受診する側も、『塗れば治る』『飲めば治る』と言う気持ちも少なからずあると思いますので、面倒な生活習慣の改善のことは、耳の痛いことなのかも知れません。
そのような事もあってか、データ化して②のことを予測することは、とても難しいと思います。
臨床をしていても、なかなか回復しないのがこの【視床下部-下垂体-副腎系】が十分回復して来ないからなのか、それともまだ生活習慣を変えられないからなのか?
または、大元である『ストレッサーがあってストレス反応』が起きてしまっているからなのか?
この辺りはそれぞれの方を施術して行く中で、読み取って行く以外に方法は無いかも知れません。
いずれにせよ、この仕組みが調って皮膚へのダメージが回復されれば、肌は元の状態に戻ると考えています。
『体質』と言う面から見ると、この【視床下部-下垂体-副腎系】が元々強くないと言う方が、『アトピー体質』や『アレルギー体質』と言われるのかも知れません。
もしそうであれば、症状を緩和することと同時に『体質改善』と言うことも、新たに考える必要が出てきます。