副腎と言う臓器は、『皮質(ひしつ)』と『髄質(ずいしつ)』からなっています。
くだもののように皮と実に分かれているのです。
外側の皮の部分が皮質で、中身が髄質となります。
面白い事に、この皮質と髄質は発生学的には、全く由来が異なっているのです。
発生学とは、個体の発生を研究する学問のことです。
主に「胚(はい)」と呼ばれるものを対象に研究したりします。
「胚芽(はいが)」などの言葉は聞いた事が有るのではないでしょうか?
これは植物の種(たね)の中で、成長して芽になるところをいいます。
精米をしすぎていないお米を胚芽米などと言いますよね。
人間などの動物にも、成長して色々な部分になるところがあり、それを「胚」と呼んでいます。
この胚は、細胞の中で3つの層に分かれて行きます。
『外胚葉(がいはいよう)』と『中胚葉(ちゅうはいよう)』、『内胚葉(ないはいよう)』の三層です。
これらは具体的には、以下のような器官に成長して行きます。
□外肺葉・・・神経、皮膚、髪の毛、爪など
□中胚葉・・・筋肉、骨格、心臓、血管、腎臓、脾臓、リンパ管、性腺など
□内胚葉・・・食道から大腸までの消化管、甲状腺、肺、気管、気管支、膵臓、肝臓、膀胱など
発生学的にみると、皮質は「中胚葉」と言うところから生じ、髄質は「外胚葉」由来なのです。
実は、なぜ発生由来がことなるのか?・・・ずっと分からないままでした。
乾癬のことを勉強させて貰うようになって、いろいろ調べましたが、どこにもありません・・・(苦笑)
それで、ずっと眺めていたら思いついたことが有ります。
体内の各器官を調節する仕組みには、神経系と内分泌系(ホルモン系)があるのですが、
神経系は迅速な調整を行うのに対して、内分泌系は緩慢ではあるのですが、長期にわたる調整を
行う仕組みなのです。
その観点からすると、副腎髄質からのホルモンは神経系の支配となっています。
前にもお話ししたように、副腎皮質ホルモンは「負のフィードバック」と言う仕組みで調節され、
過不足に対して、上位ホルモンから下位ホルモンへと階層的に支配されます。
つまり、迅速な調整(緊急反応)が求められる、または迅速な対応をするために、髄質は神経と
本を同じくする『外胚葉』から発生したのではないか?と考えてみました。
また皮質からのホルモン調整は、多少緩慢ではあるが、長い時間の中で過不足をチェックし、
それを補償するかのごとく、血行などにホルモンを乗せて送り届けるので、循環系と本を
同じくする「中胚葉」由来なのではないか?と思いました。
ですから、一口に【副腎】と言っても、皮質と髄質では単なるホルモンの作用の違いだけでは無く、
その課せられた役割によって、全く違う臓器・器官と捉えても良さそうです。